年収1500万円の米国で働く研究医の給料明細

簡単なプロフィール
①年齢、医師何年目か?
30代後半、13年目
②性別
男
③診療科、役職
基礎研究、非PI アシスタントプロフェッサー
④開業医or勤務医orその他
研究医
⑤年収(給与明細時点での税・ボーナス込み年収)
年収1500万円(日本円換算)
※2週間ごとに給料が支払われるシステムで、1年間で26回受け取ることになります。
給料明細の金額を26倍すると11万1566ドルになり、現在のレート(1ドル137円)で日本円に直すと1500万円を少し超える位になります。
⑥労働時間と残業時間(月平均)
勤務時間は週70時間程度。当直なし。
⑦残業代は出るか?
なし
⑧伝えたいこと
稼げないイメージの基礎研究者ですが、贅沢しなければなんとか食べていけます。
米国で働く研究医に色々質問してみた
①なぜ米国で働く研究医になった?
日本で研修医として働きながら、自分は臨床医に向いていないと痛感しました。患者さんを診察したり
コミュニケーションをとるのは楽しかったし充実していましたが、周りの医師に比べて明らかに仕事の効率が悪く、
チームの足を引っ張っていると感じることが多々ありました。
そこで臨床ではなく研究を通じて患者さんに還元したいと考えるようになり、研修修了後に大学院へ入学しました。
しかし、大学院生になっても臨床のノルマが多く、研究時間はほとんどとることができませんでした。
特に最初の2年間は病棟で患者さんを担当していたので、研究のことを考えることができるのは週に数時間程度、
実際に実験をできるのはほぼ週末のみという環境でした。
残念ながら大学院時代にまともな研究成果を上げることはできませんでしたが、アメリカへ留学して
一日中研究に集中できる環境に身を置けば、何か成果を上げられるのではないかと考え留学を決意しました。
②これまでの経歴は?
母校の大学病院で初期研修修了後、大学院へ入学し3年間で学位取得。その後、アメリカへ留学して現在8年目になります。
留学先としてアメリカやヨーロッパの研究室にいくつかアプライしましたが、有給ポストはもちろん、無給ポストでも
受け入れ先が見つかりませんでした。最終的に医局の先輩が留学したことのある研究室にお願いし、受け入れてもらえることになりました。
最初の1年間は無給ポスドクとして、2年目以降は有給ポスドクとして雇ってもらえるようになりました。
米国内外の財団からポスドク用フェローシップを獲得し、その後も継続して雇ってもらえています。
1年前からアシスタントプロフェッサーに昇進し、ようやく留学前の給与水準に戻りました。
③非PI アシスタントプロフェッサーってどんな役職?
アメリカではアシスタントプロフェッサーで独立して研究室を主宰するというキャリアが一般的ですが、
中には私のようにアシスタントプロフェッサーでも研究室の主宰者(PI)になることができない人がいます。
この場合、日本でいう助教に近いイメージで、ポスドクと同じように研究業務をしながら、他のポスドクへの助言や指導、
そして大学院生への講義を行います。研究業績をあげることと同時に研究費を獲得することが主な任務で、
独立できるだけの研究費(NIHのR01グラント)を獲得できれば晴れてPIとして独立できます
④1日の仕事の流れと仕事内容は?研究医って1日中マウスで実験をしたりしてるイメージがあるけど、そんな感じ?
マウスはマウスでもコンピューターマウスを扱っている時間が多いです。実験業務としては動物ではなく
ヒト由来のiPS細胞を用いた実験を主に行っていますが、研究業務として最も時間を割いているのは
自分の実験結果のデータ解析や、他の研究室のポスドクに頼まれたデータ解析、自分が共著者として入っている
論文原稿の加筆修正、研究費申請書の執筆作業などデスクワークが大半です。
私が勤務している大学ではセミナーが多く、週に3~4回出席して、多種多様な分野の最先端のレクチャーを聴講しています。
その他に、ラボミーティングや他ラボとの合同ミーティング、臨床系研究室との合同カンファレンスなど、
実験業務以外に割く時間もかなり長くなります。
⑤1日何時間、週何日働いている?土日は休み?
平日は12時間~13時間程度、土日は5~6時間働いています。
原則週7日勤務していますが、月に1、2回はラボへ行かず家で論文を読んだり執筆作業をする時間にあてています。
⑥将来の夢や目標は?
大きな目標としては根本治療がない疾患の治療標的を見つけること、短期的な目標としては、安定した研究費獲得、
そしてPIになって自身の研究室を運営することです。
⑦研究医としてやりがいを感じる瞬間はどんな時?
ボスの意見とは異なるものの、自分の仮説を支持する結果が出て論文として出版できた時です。
ボスからつまらないと一蹴されたテーマでも、自分で仮説を立てて実験を進めていき、
ボスが考えもしなかった結論を導き出せたときはとても興奮しました。
掲載先はあまり有名なジャーナルではなく、被引用回数もさほど多くないですが、自分で作り上げたという自負がある大切な仕事です。
学会で発表したとき、そして最終的に論文が出版されたときに研究を続けてきてよかったと心から思いました。
⑧研究にノルマはある?
特に決まったノルマはありませんが、自分で獲得しているフェローシップが途切れたら解雇されてしまうかもしれないというプレッシャーは常にあります。
⑨アメリカ暮らしはどれくらいになる?
約7年になります。
⑩アメリカ暮らしで苦労したことは?
現在進行形ですが、特に勤務先以外の環境で苦労します。外食するにしても買い物するにしても、
下手な英語をしゃべるアジア人という立場だと雑に扱われてしまうことをよく感じます。
列で順番に並んでいて、自分の時だけNext!と呼ばれることすらなかったり、レジで挨拶しても自分の時だけスルーされるということはよくあります。
電話でも一方的に切られることがありますし、問い合わせ先にメールを送っても無視されることは多々あります。
メールに関しては英語名(Chrisと名乗ります)を使うことで返事が返ってくるようになりました。
現実的な問題としては、物価の高いアメリカで長い間安い給料しかもらえなかったということです。
無給だった1年目はもちろんのこと、2年目以降に有給ポスドクとして雇われたところで日本で働ていたころの半分程度の収入です。
金銭面での苦労は常に付きまとい、ハングリー精神という言葉の通り、特に1年目は常にお腹をすかせて働いていました。
11.アメリカの医師免許も持っている?アメリカで臨床医として働いた経験はある?
アメリカの医師免許は取得していませんが、ECFMGという外国医学部卒業生向けの臨床研修資格を所持しています。
研究職の立場を追われたときは、臨床に転向してアメリカで臨床研修を受けようと思っています。
日本の医師免許と同様、セーフティネットして役に立つと信じています。
12.渡米して研究医になって、辛かったエピソードベスト3は?
1位:一番辛かったことは、私より数年遅く留学してきた同期の医師が、あっという間に大きな成果を出して超一流誌に論文を出したこと。
素直に喜べない自分の心の狭さに嫌気がさしますが、それ以上に才能の差というものを見せつけられてしまい数日間は放心状態でした。
自分はあまり研究成果が出ていないのに、周りの同僚がどんどん成果を上げていくのを目の当たりにしなければならないのは辛いです。
2位:気が付けば妻がいなくなっていたこと。最終的に離婚して、日本の口座に残してきた日本円を根こそぎ持っていかれました。
3位:無給ポスドクの立場で1年間過ごしたこと。貧乏が辛いのは先に述べたとおりですが、「無価値の人材」であるという
現実を突きつけられたことの方が辛かったです。アメリカでは大学院生でも給料をもらっているのはよく知られていると思いますが、
夏休みに数週間だけ研究室に参加する大学生や高校生までもが給料をもらっています。経験を買いに来たお客様たちでさえ有給ポジションなのに、
それを教える側のポスドクが無給という皮肉な状況でした。
年収1500万円の米国で働く研究医の給料明細を提供していただきました。渡米して研究医になるための流れがわかります。将来、研究をしたい方の参考になると思います。#医師の給料明細 pic.twitter.com/aAJFb11BIg
— 医師の給料明細@買取募集中🐬 (@ishikyuryo) August 27, 2022
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